オリンピックの身代金とリアリティ

映画ドラマに求められるもの。

ひとつはリアリティ。ファンタジーやコメディ等では、そこは度外視していいけど、シリアスなドラマなら、ディテールには、こだわりたい。謎解きの鍵が、証拠や証言のほんの些細な食い違いや矛盾なのに、時代考証や、季節や曜日の相違、歴史的事実の見落としで、見る気が失せてくることもある。

 「オリンピックの身代金」は大好きな作家、奥田英朗さんの小説をドラマ化したもの。奥田さんは群像劇、いわゆるグランドホテル物が多く、たくさんの登場人物が、事件や問題を通して最終的に収斂していく様はさすがという筆さばきの作家さんだ。テレビ朝日開局55周年記念ドラマということで、出てくる端役まで豪華な俳優陣。あまり、見たことのない若手俳優の刑事役もよかった。

 さて舞台は、東京オリンピック直前の東京。地方からの出稼ぎが、国家プロジェクトの名のもと、過酷な労働環境で、毎日のように命を落としている。映画「3丁目の夕日」と同じ時代背景だが、『貧しくもいい時代』ではなく、今と変わらない、貧しい者が過酷な運命に翻弄される時代として描かれている。(日テレVSテレ朝らしい)

 昭和30年代の最後の東京。もちろん私が知らない時代。「男はつらいよ」や「ウルトラマン」に出てくる日本は、オリンピック後の昭和4050年代。オリンピック前の東京の街は、「男はつらいよ」シリーズの初期に出てくる地方都市といったところだろうか?

 ドラマの方は、精一杯その頃の東京を再現しているのだろうけど、やはり、道がきれいに舗装されすぎてたり(土が見えない)、道路にゴミが落ちていない。セットはほとんど使っていないし、地方都市のフィルムコミッションでは再現に限界があったのだろう。

 ドラマのクレジットに、韓国の陜川郡とあった。どうやら、ここがロケ地のようだ。なるほど昭和30年代の日本の街並みは、韓国の地方都市に近いと判断したようだ、ロケハンの苦労が伺えるドラマだ。

 

 さて、リアリティついでに言うと、舞台は8月14日から、10月10日までの日本が一番暑い季節。爆弾魔と警視庁の追いつ追われつのドラマなのに、刑事はしっかり背広着て、走った後も、汗もかかずに、息も切れていない。クーラーなんてない時代。扇風機や、うちわを仰ぐ人もほとんどいない。汗だらだらかいて、必死に犯人を追う、そういうところのリアリティの方が、役者の演技をもっと引き立たせると思うけど、どうでしょう?

 

 最後に、ドラマで最もいい味出していたのは笹野さん!